金融庁が平成29年10月25日に公表した「平成28事務年度 金融レポート」では、
金融機関による『事業承継支援』に関する内容も、支援先数並びに新経営者(後継者)からの個人保証徴求の観点から報告されているが、そこから次のような現状と課題が読み取れる。
(1)事業承継の支援先数&販路開拓支援先数のバランス
[地域銀行から提出された金融仲介機能のベンチマークの指標分析結果]
(「貸出金量で区分した地域銀行の各支援先数平均の分布」の図表からの読み取り)
全体的には、事業承継支援先数は販路開拓支援先数に比べると少ない状況が
明らかであるが、
貸出金量3.5兆円超の規模の地域銀行では、事業承継と販路開拓のそれぞれの
支援先数がほぼ同じであり、事業承継支援への積極的な取り組みが伺える。
つまり、金融機関の取り組み次第では、販路開拓の支援を必要とする企業数と
ほぼ同じ程度の企業に対して事業承継支援を行うことも可能であるといえるの
ではないだろうか。
(2)新経営者(後継者)からの個人保証の徴求の実態
[「経営者保証に関するガイドライン」の活用状況の調査結果]
(「代表者の交代時における個人保証の解除・徴求状況」の図表からの読み取り)
代表者の交代時に、
旧経営者の個人保証を解除せず、かつ、
新経営者から
個人保証を徴求した金融機関が
全体のおよそ5割を占めている。
これに対して、
旧経営者の個人保証を解除した&
新経営者から個人保証を徴求
しなかった金融機関は、
全体の1割にも満たない。
この状況においては、
個人保証に大きな負担を感じて事業承継を断念した旧経営者や後継者(になる
ことを希望していた者)も中にはいたであろうことが想像できる。
また今後、この状況が改善されない限り、事業引継ぎ時に相当の借入残高がある
場合や、後継者が事業承継に必要な資金を金融機関からの借入れに頼らざるを
得ない状況に置かれている場合などにおいては、円滑な事業承継を図るうえでの
大きな障害となることもあるのではないだろうか。
なお、本レポートでは、旧経営者の個人保証の解除の徹底や、新経営者(後継者)
への無保証融資の推進を積極的に実践している金融機関があることも紹介され
ている。
金融庁公表の「平成28事務年度 金融レポート」に関する内容は
下記リンク先にてご覧になれます。
平成28事務年度 金融レポートについて
「平成28事務年度 金融レポート」(PDF:4,719KB)
【金融庁ウェブサイト (http://www.fsa.go.jp/news/29/20171025.html)平成29年10月25日】